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内分泌の病気

こつたいしゃ/
ふくこうじょうせん
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症とは

悪性腫瘍では経過中にしばしば高カルシウム血症を合併し,時にはこの高カルシウム血症が直接死因となることさえあります。進行癌では比較的多い合併症で、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は機序の面から以下の二つに分類されています。

悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症ではPTH低値、PTH-related protein (PTHrP)高値となる悪性体液性高カルシウム血症(humoral hypercalcemia of malignancy:HHM)と骨転移に伴う広範な骨破壊による高カルシウム血症(local osteolytic hypercalcemia:LOH)がありHHM80%、LOH20%の頻度です。HHMは、腫瘍細胞が過剰に産生・分泌するPTHrPによって起こります。HHMは、肺扁平上皮癌、乳癌、泌尿生殖器系腫瘍や成人T細胞白血病での発症頻度が高いです。一方、LOHは、肺癌、乳癌などの骨転移や多発性骨髄腫などで、骨転移した局所で腫瘍が産生する骨吸収因子によって起こります。

PTHrPを産生する主要の種類、HHMの発症頻度は

成人T細胞白血病(ATL)では、80%と極めて高頻度で起こります。一方、固形癌の中で一番多いのは、肺ガンです。その他、口腔癌、鼻腔癌、咽頭癌、腎癌、乳がんでも起こります。固形癌での頻度は15%前後と言われ、末期には約2倍に増加します。

高カルシウム血症による症状は

高カルシウム血症は、特徴的な症状に乏しいです。軽度の場合は無症状です。血清カルシウム値が、12~13mg/dl以上で倦怠感、疲労感、食欲不振などが起こり、さらに高度になると筋力低下、口渇、多飲、多尿、悪心、嘔吐等が出現します。高カルシウム血症は、腎臓での尿濃縮機能を低下させるため、ほとんど全例で脱水が見られます。また、精神症状を認めることもあり、最初はイライラ感のような軽い症状から始まり、放置すると昏迷から昏睡になり、時に死に至ることもあります。

このように、主に症状は上記に述べた中枢神経症状、消化器症状、腎障害の3つですが、悪性腫瘍に特異的というわけではありません。実際に、進行性の癌の場合には、全身状態が悪いため、高カルシウム血症の症状が気づかれにくいということもあります。しかし、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の特徴は、血清カルシウム値の上昇が急速だということです。高カルシウム血症の最も多い原因疾患である原発性副甲状腺機能亢進症では、血中カルシウム濃度が数日間で大きく動くことはほとんどありませんが、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症では、脱水・腎機能不全などによる悪循環が加わって、数日間のうちにカルシウム濃度が倍以上に上昇することもります。

悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の診断は

高カルシウム血症が認められたら、血中PTHの低値を確認することが大事です。また、PTHrPを測定すれば、悪性腫瘍によるPTHrPによるものかどうかがわかります。

高カルシウム血症の治療は

原疾患に対する治療が大前提ですが、それと並行して高カルシウム血症に伴う腎機能の低下、脱水症状、骨吸収亢進に対する治療が必要です。まずは、脱水の改善のために、生理食塩水の点滴静注によりカルシウム排泄の促し、さらに全身状態を観察しながらラシックスなどの利尿薬を併用します。この治療により、循環血行動態や高カルシウム血症の改善が期待できます。

一方、骨吸収亢進に対する治療としては、非常に強力な骨吸収抑制薬であるビフォスフォネート系製剤を投与します。骨は、骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞とが、常に骨吸収と骨形成を繰り返して活発な代謝を営んでいる組織で、この破骨細胞により骨ミネラルが溶け出して、血中にカルシウムとリンが放出されています。ビフォスフォネートは、この破骨細胞を強力に抑制することで、骨吸収を抑制して高カルシウム血症を是正します。