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内分泌の病気

ひまん/せっしょくちょうせつ
視床下部性肥満
視床下部性肥満とは

二次性肥満の中で、視床下部の異常によって生じるものを視床下部性肥満と言います。視床下部には摂食調節に関わる複数の神経核があり、また下垂体ホルモンの分泌制御、自律神経の調節、熱産生などエネルギー調節に密接に関わるため、視床下部障害が生じると高度で難治性の肥満をきたすことが報告されています。またレプチンの受容体が視床下部に高発現していることから、レプチンやレプチン受容体自体、さらにその下流で制御される遺伝子の異常なども視床下部性肥満として分類されることもあります。一部の遺伝性肥満のほかに、1)Fröhlich症候群(狭義には、下垂体近傍に発生した腫瘍が視床下部を圧迫して生じる)、2)Kleine-Levin症候群(間脳、視床下部の原因不明な機能障害)3)Empty-sella症候群(トルコ鞍空洞症候群)、などが視床下部性肥満として報告されています。また視床下部の器質的破壊をきたすような脳血管障害、腫瘍摘出に伴う手術侵襲、放射線治療などによっても生じることが知られています。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

現在、Fröhlich症候群としての報告は少なく、この病名での患者数の把握は困難と思われます。ただし、視床下部領域に器質的障害を認めた患者には視床下部性肥満の発症に留意することが重要です。一方で、Kleine-Levin症候群は世界的にも1000例程度の報告しかなく、極めて珍しい病気の一つと言われています。

この病気はどのような人に多いのですか?

Prader-Willi症候群を始めとした遺伝性肥満の患者では、原因遺伝子をもつ家系に発症します。一方で、視床下部に進展する腫瘍をもつ患者、またその治療にともなう手術侵襲や放射線治療歴がある患者、さらに頭部外傷による視床下部障害でも発症するため、交通事故後の患者も注意が必要です。

この病気の原因はわかっているのですか?

遺伝性肥満の患者では特定の遺伝子が同定されているものもあります(遺伝性肥満の項を参照)。視床下部障害の原因は記述の通りです。Kleine-Levin症候群は報告例が少なく、成因が不明とされています。

この病気は遺伝するのですか?

遺伝するものあります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

視床下部機能障害と障害された下垂体ホルモンの種類や程度により、その症状は規定されます。肥満の発症に関しては、満腹中枢の異常による過食、自律神経系の機能低下によるエネルギー代謝異常に加えて、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、男性におけるテストステロンの低下なども、基礎代謝の低下、筋肉量の減少とともに体脂肪増加に関わっています。下垂体ホルモンの低下は、倦怠感、疲労感の増加をきたし、骨密度の減少、月経不順や不妊症、脂肪肝、脂質異常症を始めとした生活習慣病の発症にも寄与しています。代表的な疾患においての特徴的症状をまとめます。
1)Fröhlich症候群:現在では、視床下部に器質的病変(腫瘍と限らない)を認め、肥満と性腺機能低下症状を中核とし、これに尿崩症、視力障害、脳圧亢進症状などを呈するものを定義しています。
2)Kleine-Levin症候群:思春期の若年男性に好発し、無関心、無気力を伴う得意な傾眠と病的過食を繰り返す疾患として報告されました。攻撃性亢進や性行動異常などの性格変化で始まり、次いで傾眠と睡眠状態が数日から数週間にわたって認められ、目が覚めるとむさぼるように食べると言われています。
3)Empty-sella症候群:症候性の場合は、肥満のほかに、頭痛や視力障害、無月経をはじめとした内分泌症状をともなうことが知られています。

この病気にはどのような治療法がありますか?

まず原疾患に対する対応が必要です。一旦発症した視床下部障害は治療が困難であることから、腫瘍摘出に当たっては熟練した専門医がいる施設での手術が望まれます。内分泌異常に対しては、適切なホルモン補充療法が必要です。肥満自体には原発性肥満と同様に、食事・運動療法および行動療法を行います。しかし視床下部性肥満は過食による脂肪量増加に加えて、エネルギー代謝異常や遺伝性肥満など知能障害を伴う症例が含まれるため、元来食事・運動療法に抵抗性な場合も多く見受けられます。特に小児期での発症の場合、受験や不登校などで生活活動量が減ることも肥満を助長します。日常生活の中で習慣的に身体を動かすように努め、肥満悪化の予防策を練っておくことも重要です。また学校の現場では理解されにくい身体症状、感情の起伏、外見上の心配などをもっていることも多く、疾患への理解と心理的なサポートも必要になってきます。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

予後はその原因疾患により異なりますが、腫瘍でも頭蓋咽頭腫や下垂体腺腫の生命に関する予後は比較的良好です。一方で、知的障害を伴う場合には、根気強い体重管理にも関わらず高度肥満症になるケースも多いと考えられます。