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内分泌の病気

ひまん/せっしょくちょうせつ
神経性過食症
神経性過食症とは

神経性過食症(bulimia nervosa: BN)は摂食障害の一つです。「むちゃ食い」(「気晴らし食い」)と呼ばれる過食が特徴です。この過食衝動は自身でコントロールできず、短時間に大量の食べ物を過食します。一方で、肥満恐怖のために過食後の嘔吐、下剤の乱用などの排出行為をしたり、一定期間、節食・不食することで体重をコントロールしようとします。排出行為が全くない場合でも「むちゃ食い」の過食があれば神経性過食症と診断されます。神経性食思不振症の中にも「むちゃ食い」と排出行為をする場合もあり、厳密に区別できないこともあります。さらに、最近では、特定不能の摂食障害という、神経性食思不振症にも神経性過食症にも相当しない摂食障害が増加しており、中でも肥満傾向が強い患者は、むちゃ食い性障害と呼ばれ、第3の摂食障害として注目されています。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

厚生労働省が病院を対象とし1998年に実施した調査結果によると、神経性過食症の年間有病率は人口10万に対し5.1人で、神経性食思不振症以上に増加しています。京都府の学生を対象とした実態調査(疫学調査)では、神経性過食症の有病率は、中学生0.3%、高校生2.2%、大学生2.2%でした。海外では特定不能の摂食障害が半数以上を占め、なかでもむちゃ食い性障害が増加していると報告されています。

この病気はどのような人に多いのですか?

神経性過食症は20代が多く、90%以上が女性です。神経性食思不振症が中学生や高校生に多かったのに対して、神経性過食症は大学生、就業者、主婦に多いと言われています。

この病気の原因はわかっているのですか?

神経性過食症も、文化社会的要因、心理的要因、生物学的要因(遺伝素因、脳機能の変化)が複雑に相互に関連しあって発症する多次元モデルが考えられています。文化社会的な要因、心理的要因は神経性食思不振症同様です。神経性過食症の生物学的要因の一つに、脳内の神経回路の異常、中でも報酬回路の低反応性が指摘されています。従って、神経性過食症では報酬系を刺激するためにより大量に食べなければならないこと、抑制ネットワークの活動性の低下により抑制行動のコントロールが低下していることが示唆されています。

この病気は遺伝するのですか?

神経性過食症を発症する特定の遺伝子は見つかっていませんが、第10染色体上の領域に連鎖が認められ、この領域の遺伝子が重要な役割を担っている可能性が示唆されています。

この病気ではどのような症状がおきますか?

神経性過食症の中核症状は、過食、体重増加を防ぐ排出行為、肥満恐怖、体重・体型に左右される低い自己評価です。排出行為は、自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤の乱用、過食後の絶食や過剰な運動などがあります。過食は「気晴らし食い」とも呼ばれ、過食している最中は全く他のことは考えられず、一時的な逃避・回避行動的な面があります。過食後はほとんどの患者は自己嫌悪感が高まり、肥満恐怖のために自己誘発性嘔吐など排出行為に至り、その後、再度、過食をすることも稀ではありません。身体的な合併症も問題ですが、気分障害、不安障害、アルコール依存症やパーソナリティー障害などの精神科的併存症、窃盗などの問題行動も神経性食思不振症よりも高率に認め、そうなると病態は一層複雑になります。むちゃ食い性障害では摂食障害の症状以外に肥満を来すことが高くなります。

この病気にはどのような治療法がありますか?

神経性過食症の患者は自分が病気であるという認識を持っていることが多く、自発的に医療機関を受診すると言われています。身体的な問題で入院することは少なく、ほとんどは外来での治療になります。一方で治療を自己中断したり、医療機関を転々としたりすることは稀ではありません。根気よく自身の治療に向き合ってくれる医師との信頼関係の構築が重要とも言えます。外来では、行動療法、認知行動療法、支持的精神療法、対人関係療法、家族療法そして薬物療法などの治療法がありますが、個人の状態に応じて選択されているのが実情です。また、併存精神疾患がある場合は同時に治療が行われます。海外では、認知行動療法と一部のSSRIによる薬物療法(日本では保険適応外)が有効であるとの報告があります。

この病気はどういう経過をたどるのですか?

神経性過食症は多くの場合、症状が改善したり悪化したりします。治療を受けなくても一時的に良くなることもありますが、何かのきっかけで再発することもあります。双極性障害などの気分障害、不安障害など併存精神疾患があると難治化・慢性化することが多いとも言われ、継続した治療・フォローが大切です。一部、本人の成長・成熟により寛解(治癒)することもありますが、過食などの症状が軽快した状態が続き、社会生活に影響が出ないようにすることが目標とも言えます。