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内分泌の病気

とうにょうびょう
1型糖尿病
1型糖尿病(急性発症)とは

この病気は、主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症します。以前はIDDM(インスリン依存性糖尿病)やⅠ型糖尿病と表記される事もありましたが、現在では“1型”糖尿病と表記が統一化されています。生活習慣病の一種である2型糖尿病とは全く異なる性質の糖尿病で、急速にβ細胞が破壊され、様々な自己抗体が陽性になります。抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体、抗ZnT8抗体などがそれにあたります。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

2型糖尿病に比べると少ないですが、毎年約1万4千人の患者さんが発症し、全国で約21万人が治療を受けていて、決して希な疾患ではありません。発症には地域差があることが知られており、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなど北欧諸国に多く見られます。日本国内での地域差はないとされています。

この病気はどのような人に多いのですか

もともと若年者(小児)に多い病気ですが、最近は小児1型糖尿病の発症率の増加および発症の若年化が言われています。発症のピークは思春期にあり、それ以降は男女とも発症が低下する事が分かっています。しかし、成人にも発症する事がありますので、小児だけの病気ではありません。

この病気の原因はわかっているのですか

原因はまだ不明な点もありますが、約90%が自己免疫性(1A型)、残り10%が特発性(1B型、原因不明)とされています。本来外敵から体を守るために働くはずの免疫が、何らかの拍子に間違ってβ細胞を標的にしてしまい、破壊してしまいます。同様に内分泌臓器に対する免疫異常で発症する甲状腺疾患(バセドウ病や橋本病)を併発する事もあります。また、発症とウイルス感染の関連を示唆する報告が数多くされています。主なものとしてはエンテロウイルス、ムンプス、麻疹、サイトメガロウイルス、レトロウイルスなどです。重要なのは、2型糖尿病と違い生活習慣が糖尿病発症に無関係である事です。

この病気は遺伝するのですか

通常は遺伝しません。しかし、疾患感受性遺伝子としてHLA遺伝子、インスリン遺伝子、CTLA4遺伝子、PTPN22遺伝子などが報告されており、これらの遺伝子を有する患者では家族内発症も認められます。

この病気ではどのような症状がおきますか

糖尿病の典型的な症状といわれる口渇、多飲、多尿、体重減少がよくある症状です。小児の場合は夜尿(おねしょ)で気づかれるケースもあります。インスリンが分泌されないと、血糖の上昇に伴い尿糖が排出され、浸透圧利尿が増えるため、脱水になります。また、インスリンの不足はエネルギーの同化(蓄積)が出来なくなり、痩せていきます。さらに、インスリンが全くなくなった状態ではケトン体が産生され、ケトーシスやケトアシドーシスという危機的状態となり、昏睡や死に至るケースもあります。症状は突然起こることが特徴で、前年の健診までは血糖値の上昇は指摘されなかったといわれる患者さんがほとんどです。また、風邪症状など先行感染を伴う場合がよくあります。

この病気にはどのような治療法がありますか
  1. インスリン療法
  2. ほとんどの場合、1型糖尿病の患者さんはインスリン療法が不可欠です。インスリンは今でこそ、糖尿病治療の最終手段のようなイメージがありますが、1921年にBantingとBestがインスリンを発見した際は、1型糖尿病患者さんの命を救ったミラクルでした。現在では開発が進み、遺伝子を組み替えたインスリンを巧みに注射することで、血糖を正常に近付けることが可能です。また、インスリン・ポンプを用いて、より安定した血糖コントロールが出来ることもあります。

  3. 薬物療法
  4. インスリン以外の多くの抗糖尿病薬が2型糖尿病のみに保険適応がありますが、αグルコシダーゼ阻害薬は食後過血糖がある場合、1型糖尿病患者さんにも投与が可能です。また、今後1型糖尿病患者さんが内服可能な抗糖尿病薬が増えていく可能性があります。

  5. 移植手術
  6. 膵臓移植や膵島移植といった方法で、治療される事もありますが、わが国では希な事です。

この病気はどういう経過をたどるのですか

厳格に血糖をコントロールすれば、合併症なく糖尿病ではない人と同じような生活が出来ます。1型糖尿病でありながら、プロ野球選手になった人もいます。しかし、血糖コントロールを怠ると、目の合併症(糖尿病網膜症)で失明したり、腎臓の合併症(糖尿病腎症)で透析になったり、神経の合併症(糖尿病神経障害)で足を切断する可能性もあります。また、動脈硬化や癌、認知症といった恐ろしい病気を引き起こす可能性もあります。インスリンの自己中断は前述のケトアシドーシスの原因になるので、決してしないでください。