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内分泌の病気

とうにょうびょう
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)とは

この病気は、主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症します。1型糖尿病に含まれますが、急性発症1型糖尿病や劇症1型糖尿病と違い、ケトアシドーシスに陥るケースは少なく、2型糖尿病のような発症形式をとります。したがって、抗GAD抗体等の自己抗体を測定していない場合は、2型糖尿病として治療され、見逃される場合もあります。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

正確な患者数は不明です。また、先述のとおり見逃されている症例も多く存在している可能性があります。また、抗GAD抗体は非糖尿病者でも陽性になることもあり、自己免疫学的な機序が糖尿病発症の直接的な原因になっているか不明な症例も多数存在します。

この病気はどのような人に多いのですか

特には男女差や地域差はありませんが、急性発症1型糖尿病に比して、成人発症が多い事を臨床上経験します。

この病気の原因はわかっているのですか

原因はまだ不明な点もありますが、他の1型糖尿病と同様自己免疫学的な機序が考えられています。日本糖尿病学会が定める、緩徐進行1型糖尿病の診断基準を下記に示します。

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2012)
【必須項目】
  1. 経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性である。a)
  2. 糖尿病の発症(もしくは診断)時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく、ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない。b)
    判定:上記1、2を満たす場合、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」と診断する。

a)Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体(IAA)もしくは亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体に関するエビデンスは不十分であるため現段階では診断基準に含まない。

b)ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限りではない。

【参考項目】
  1. 経過とともにインスリン分泌能が緩徐に低下し、糖尿病の発症(もしくは診断)後3ヶ月を過ぎてからインスリン療法が必要になり、高頻度にインスリン依存状態となる。なお小児科領域では、糖尿病と診断された時点で、ただちに少量(0.5単位/kg体重以下)のインスリン投与を開始することがある。内科領域でもGAD抗体陽性が判明すると、インスリン分泌低下阻止を考慮してインスリン治療がただちに開始されることがある。
  2. GAD抗体やICAは多くの例で経過とともに陰性化する。
  3. GAD抗体やICAの抗体価にかかわらず、インスリン分泌能の低下がごく緩徐であるため、あるいは変化しないため、発症(診断)後10年以上たってもインスリン依存状態まで進行しない例がある。

(糖尿病 2013;56(8):590-597)

この病気は遺伝するのですか

通常は遺伝しません。

この病気ではどのような症状がおきますか

症状はありません。高血糖が著明になると、口渇、多飲、多尿、体重減少と言った糖尿病の典型的症状が出現する可能性もあります。

この病気にはどのような治療法がありますか
  1. インスリン療法
  2. 保険診療上1型糖尿病に分類されますので、インスリン療法が基本となります。急性発症1型糖尿病では、基礎インスリンと追加インスリンのBasal-Bolus療法が不可欠な場合がほとんどですが、緩徐進行1型糖尿病で、内因性のインスリン分泌能がある程度保たれている症例では、インスリン投与量や注射回数を減らせる場合もあります。

  3. 薬物療法
  4. αグルコシダーゼ阻害薬は食後過血糖がある場合、緩徐進行1型糖尿病患者さんにも投与が可能です。また、研究レベルではインクレチン関連薬が有効である事を示す報告もあります。

この病気はどういう経過をたどるのですか

他の糖尿病と同様に、放置されると合併症が進行しますが、厳格に血糖をコントロールすれば、合併症なく糖尿病ではない人と同じような生活が出来ます。また、経過と共にインスリン分泌能は低下していきますが、少しでもそれを保つためにも、インスリン療法による厳格な血糖コントロールが重要である事がいわれています。