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内分泌の病気

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妊娠糖尿病
妊娠糖尿病

今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。妊娠時に診断された糖代謝異常でも、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、随時もしくは糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、糖尿病網膜症の存在が認められるものは、糖尿病合併妊娠とされます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

近年のわが国における糖尿病患者数の増加と共に、晩婚化・晩産化に伴い、増加傾向にあります。全妊婦に糖負荷試験をしたとすると、12.08%の妊婦に妊娠糖尿病があることがいわれており、これに既存の糖尿病と糖尿病合併妊娠を加えると約15%の妊婦が耐糖能異常と診断されます。

この病気はどのような人に多いのですか

2型糖尿病のリスクとなる、過食・肥満・運動不足といった生活習慣は当然のことリスクになりえますが、遺伝的に膵β細胞機能が低下している場合、すなわち糖尿病の家族歴がある場合に起こりやすいです。特に第一度近親者に糖尿病がある場合はハイリスクといえます。

この病気の原因はわかっているのですか

元々2型糖尿病になりやすい遺伝的な素因があった上に、妊娠時(特に妊娠後半)のインスリン抵抗性が加わった際に発症します。健常人ではインスリン抵抗性に対応して母体の膵β細胞の肥大と過形成がおこりインスリン分泌能が増強されますが、それが追いつかない状態といえます。インスリン抵抗性の原因としては胎盤でのインスリンの分解やアディポネクチンの低下が言われています。

この病気は遺伝するのですか

糖尿病になりやすい遺伝的素因、膵β細胞の脆弱性という意味で遺伝しますが、母親が妊娠糖尿病だからといってその子も妊娠糖尿病になるとは限りません。

この病気ではどのような症状がおきますか

症状はほとんどありませんので、糖負荷試験を行い早期に診断治療することが勧められます。

この病気にはどのような治療法がありますか
  1. インスリン療法
  2. 経口血糖降下薬は妊婦に使用できないため、強化インスリン療法による厳格な血糖管理が必要です。空腹時血糖95mg/dL以下、食後1時間140 mg/dL以下、食後2時間120 mg/dL以下を目標にします。インスリンの中には妊娠時に使用可能なカテゴリーB(米国食品医薬品局:FDA)とそうでないものがあるので注意が必要です(表参照)

    表:米国FDA基準とインスリン
    カテゴリーB 速効型インスリン
    (R製剤)
    ヒューマリンR
    ノボリンR
    超速効型インスリン インスリンリスプロ
    インスリンアスパルト
    中間型インスリン
    (NPH製剤)
    ヒューマリンN
    ノボリンN
    持効型インスリン インスリンデテミル
    カテゴリーC 超速効型インスリン インスリングルリジン
    持効型インスリン インスリングラルギン
    認可されていない 持効型インスリン インスリンデグルデク
  3. 食事療法
  4. 厳格かつバランスの取れた食事療法の再検討と指導が必要です。標準体重あたり30kcalのエネルギー摂取量を基本とし、妊娠初期は50 kcal、中期は250 kcal、末期は450 kcalの負荷エネルギーを加えます。

この病気はどういう経過をたどるのですか

厳格に血糖をコントロールすれば、合併症なく通常通り出産し、産後は血糖も正常化するケースがほとんどです。しかし、コントロールが不十分であると、胎児側の合併症として、巨大児、新生児低血糖、先天奇形や種々の発育遅延、母体側の合併症としてケトアシドーシス、網膜症や腎症の悪化、流産を起こす事があります。また、妊娠糖尿病の既往がある女性は、将来2型糖尿病を発症しやすい素因を持っていますので、産後も食事運動療法を励行する事が勧められます。